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健康診断で「脂肪肝」と言われたら|肝臓専門医が解説
2026年8月15日
健康診断や人間ドックで「脂肪肝」と言われた方へ
放置せず、まずは正しく知ることから始めましょう
脂肪肝は日本人に非常に多くみられる病気であり、成人の約3人に1人に認められるともいわれています。身近な病気である一方、なかには肝硬変症や肝細胞がんへ進行する例もあり、適切な評価と管理が重要です。
近年では、脂肪肝は糖尿病や高血圧、脂質異常症などとも深く関わる全身性の疾患として理解されるようになっています。また、診療では肝臓に脂肪があるかどうかだけでなく、肝線維化の程度を評価することが重視されています。
この記事が、脂肪肝について正しく理解する一助となれば幸いです。
脂肪肝とはどのような病気でしょうか
脂肪肝とは、本来あまり脂肪を蓄積しない肝臓に、中性脂肪が過剰に蓄積した状態をいいます。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり病気が進行するまで自覚症状が現れないことが特徴です。そのため、多くの方は健康診断の腹部超音波検査や、AST・ALT・γ-GTPなどの血液検査の異常をきっかけに見つかります。
症状がないことは珍しくありませんが、それだけで病気が軽いとは判断できません。
「MASLD」という新しい考え方
これまで、お酒をあまり飲まない方の脂肪肝は「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれていました。
しかし近年では、脂肪肝の背景には肥満だけでなく、糖尿病、高血圧、脂質異常症、内臓脂肪の蓄積、インスリン抵抗性などの代謝異常が深く関わっていることが明らかになりました。
このため現在では、「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」という名称が国際的に用いられています。
さらに、脂肪肝に炎症や肝細胞障害を伴うものは「MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」と呼ばれ、将来的に肝臓の線維化が進行する可能性があるため、より慎重な経過観察が必要となります。
脂肪肝が問題となる理由
脂肪肝のすべてが重症化するわけではありません。
しかし、一部では慢性的な炎症が続くことにより肝臓が徐々に硬くなり(線維化)、肝硬変症や肝不全、さらには肝細胞がんへ進行することがあります。
また、脂肪肝のある方では、心筋梗塞、脳梗塞、慢性腎臓病などの発症リスクも高くなることが知られています。
そのため、脂肪肝は肝臓だけを診る病気ではなく、生活習慣病全体を包括的に評価することが重要です。
痩せている方でも脂肪肝になることがあります
脂肪肝は肥満体型の方に多くみられますが、日本人では体格が標準あるいはやせ型であっても発症することが知られています。
内臓脂肪の蓄積や筋肉量の低下、糖代謝異常などが関係していると考えられており、「痩せているから脂肪肝ではない」とは言えません。
健康診断で脂肪肝を指摘された場合には、体型にかかわらず一度詳しく評価することが望まれます。
現在の脂肪肝診療で最も重要なのは「肝線維化」の評価です
近年の脂肪肝診療では、脂肪肝があるかどうか以上に、「肝臓にどの程度の線維化が生じているか」を評価することが重要と考えられています。
線維化とは、慢性的な炎症によって正常な肝臓の組織が硬く変化していく過程です。線維化が進行すると、肝硬変症や肝細胞がんのリスクが高まることが知られており、患者さんの将来の予後を左右する重要な指標となります。
現在は、まずFIB-4 indexを用いて線維化のリスクを評価することが一般的です。FIB-4 indexは、年齢、AST、ALT、血小板数から算出される指標であり、簡便で有用なスクリーニング法として広く利用されています。
さらに必要に応じて、M2BPGiやELFスコアなどの血液検査を行うことで、より詳細な線維化の評価が可能になります。
また、近年では超音波を用いて肝臓の硬さを測定する肝硬度測定(エラストグラフィ)も普及しており、侵襲的な肝生検を行わずに線維化の程度を推定できるようになっています。
これらの検査を組み合わせることで、線維化が進行している患者さんを早期に見つけ、適切な治療や経過観察につなげることが、現在の脂肪肝診療の基本となっています。
脂肪肝以外の肝疾患の存在を調べることも大切です
脂肪肝と診断された場合でも、その背景にはさまざまな病気が隠れていることがあります。
例えば、
- B型肝炎
- C型肝炎
- 自己免疫性肝炎
- 原発性胆汁性胆管炎
- 薬物性肝障害
などでは、脂肪肝と似た血液検査異常を示すことがあります。
そのため、「脂肪肝だから様子を見ればよい」と自己判断するのではなく、必要に応じて他の肝疾患が隠れていないかを調べることが重要です。
脂肪肝の治療
脂肪肝治療の基本は生活習慣の改善です。
食事内容の見直しと適度な運動による体重管理は、肝臓に蓄積した脂肪を減少させる最も基本的な治療です。
また、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを適切に管理することも重要です。
近年は薬物療法の研究も進んでいますが、患者さんごとの病態を十分に評価した上で、治療方針を決定することが大切です。
よくあるご質問
Q1.脂肪肝は自然に治ることはありますか。
軽度の脂肪肝では、食事や運動など生活習慣の改善によって肝臓の脂肪が減少し、改善することがあります。一方で、炎症や線維化を伴う場合には、継続的な評価と治療が必要となることがあります。
Q2.お酒を飲まなくても脂肪肝になりますか。
はい。現在では、お酒とは関係なく、肥満や糖尿病、脂質異常症などの代謝異常を背景として脂肪肝を発症する方が多く認められています。
Q3.肝機能が正常でも脂肪肝はありますか。
あります。ASTやALTが正常であっても脂肪肝が存在することは珍しくありません。また、肝機能が正常でも線維化が進行している場合があるため、必要に応じて詳しい評価を行います。
Q4.痩せている人でも脂肪肝になりますか。
日本人では、BMIが高くなくても脂肪肝を認めることがあります。体型だけでは判断できないため、健康診断で指摘された場合には適切な評価を受けることが望まれます。
Q5.脂肪肝は肝がんの原因になりますか。
脂肪肝のすべてが肝がんに進行するわけではありません。しかし、MASHに伴う肝線維化が進行すると、肝硬変や肝細胞がんを発症することがあります。そのため、線維化の程度を適切に評価し、厳重に経過観察を行うことが重要です。
おわりに
脂肪肝は、身近な病気でありながら、その病態や進行の程度は一人ひとり異なります。現在では、脂肪肝の有無だけではなく、肝線維化の程度を適切に評価し、その結果に応じた診療を行うことが重要と考えられています。
健康診断で脂肪肝や肝機能異常を指摘された際には、そのまま経過を見るのではなく、検査を行い、病状を適切に評価することが大切です。
当院は神奈川県指定肝臓専門医療機関として、脂肪肝をはじめとするさまざまな肝疾患の診療に取り組んでいます。また、院長は日本肝臓学会認定 肝臓専門医・指導医として、最新の知見に基づいた診療を行っています。
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