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End-of-life Careご自宅での看取り

自宅でお看取りをするということ

在宅看取りで最も大切なことは、
本人と家族が全員「自宅での最期」について理解をし、
それを望んでいるということです。

本人の意思であることはもちろん大事なのですが、
それ以上に、負担が大きくなる家族全員の同意を得ることが
在宅での看取りにおいてはとても重要です。

在宅での医療や介護、現在の病状や今後起こり得る病状の変化についてしっかりと理解する必要があります。

在宅看取りの現状

自宅でお看取りをするということ

日本では1950年代くらいまでは、死亡する人のおよそ80%は自宅で亡くなっていました。「自分の家で死ぬ」ということは、言わば当たり前の状態であったわけですが、徐々にその割合が減り、2000年のデータでは、病院で亡くなる方の割合が81%と、状況が大きく変わりました。そこには医療技術が進歩して、高度な治療や延命措置が行えるようになったことや、核家族化などの家族構成の変化も要因と考えられます。

一方で、2012年に内閣府が行なった「高齢者の健康に関する意識調査」によると、「最期を迎えたい場所」という質問に対して75歳以上の60%近い人が「自宅」と答えました。人生の最期は住み慣れた自宅で家族に看取られて旅立ちたいと考える方が多いにもかかわらず、最期を病院で迎える方が大半であるというのが現実です。そこには、本人と家族の意思の乖離も要因の一つと考えら得れます。

時期ごとの変化とポイント

余命半年~2ヵ月程度の変化
(症状の変化が月単位と
考えられる時期)

余命半年~2ヵ月程度の変化(症状の変化が月単位と考えられる時期)

  • 食事量・水分量の減少
  • 不眠や不安の増幅
  • 痛みの出現

個人差はありますが、病状が進んでくると、食事量や水分量が減少してきます。決して食事が摂れないから病気が進むわけではありません。食べられなくなるというのは、余分なエネルギーが必要なくなり、体が食事を求めなくなっているサインでもあります。しかし、家族としては不安になり、「食べてほしい」「元気になってほしい」という想いから食べさせようと躍起になってしまいがちです。無理に食べるとむせる様になり、誤嚥や場合によっては窒息させてしまうこともあるため注意が必要です。
不眠の原因には痛みや身体の変化による不安、あるいは飲んでいる薬が原因のことが多くあります。病気や加齢に伴う体力の低下を身体のだるさと感じることもあります。ここで一番大事なことは不安な気持ちを聞いてあげることです。そして日によって変化があることを理解して、だるさが強い時に無理をさせないことが大事になります。体力を減らさないようにと頑張って動くことを進めがちですが、だるさが改善しない要因になってしまうため、ご本人のペースを尊重することも必要です。また、あまりに眠れない日は、主治医に相談して睡眠薬の処方を検討します。
病気に起因するものもありますが、動きが制限されることから痛みも出現しやすくなります。痛みの原因によって対処法は変わりますが、痛み止めの薬を検討したり、マッサージが有効になることもあります。苦痛が緩和されていれば日常生活は比較的安定しやすくなります。

この時期のPoint
今後予想されるADLの変化に備え、身辺整理・看取りの場の再確認を行う。

余命2ヶ月~2週間程度の変化
(症状の変化が週単位と
考えられる時期)

余命2ヶ月~2週間程度の変化(症状の変化が週単位と考えられる時期)

  • 日常生活の自立度の急激な低下
  • 排泄を失敗するようになる
  • コミュニケーションが取りにくくなる
  • 意味の分からないことを言うようになる(せん妄)

この期間は急な変化がみられたり、想像しないことが起きることがあります。
この時期には食事を十分に摂取することが困難になります。食事や水分などを摂取できても、むせやすくなるため、提供するのも怖くなる場合もあります。本人のペースに合わせて行うようにし、食事介助のやり方に不安がある場合は、訪問看護サービスを利用することで、看護師からレクチャーを受けることもできます。
食事を拒否されるような場合は、口を拭うだけや小さい氷だけ、あるいはアイスクリームなど食べやすいものを選択するのも良いでしょう。うがいや口をゆすぐだけでも気分転換になります。

食事や水分が減り、心臓や腎臓の機能も低下することで、尿も便も出にくくなります。また、感覚が鈍くなることや動くことが困難となり、失禁してしまうことが多くなります。オムツの使用などで自尊心が傷つくことがあるので、声掛けは注意するようにします。

体内に取り込める酸素が少なくなることで、肝臓や腎臓の働きが悪くなって、有毒な物質が排泄されなくなり、脳が眠るような状態になることで、つじつまの合わないことを言ったり、手足を動かすなど落ち着かなくなることがあります。興奮状態に陥る場合もあるので、その際は主治医に処方をお願いして対応してもよいでしょう。もし声掛けなどに困れば、普段通りに声をかけたり、体に触れてあげたり、ただ部屋の中で、ご家族がお話されている声が聞こえているだけでも、精神的に落ち着くこともあります。

この時期のPoint
食べられなくなるのは最後の「兆し」なので、無理に食べさせるのは禁物。
看護・介護に不安を感じた場合は抱え込まず主治医や訪問看護師に相談するのが◎。

余命2週間~2日程度の変化
(症状の変化が日単位と
考えられる時期)

余命2週間~2日程度の変化(症状の変化が日単位と考えられる時期)

  • 発語が減ってくる
  • 寝ている時間の方が長くなる
  • 声をかけても反応が薄くなる
  • 食事や水分がまったく摂れなくなる

この時期になると、だんだんと眠っている時間が長くなっていきます。言葉をかけても反応してくれなくなったり、家族のことを認識してくれなくこともあります。話しておきたいことがあれば、先送りせず、今の時期を大事にして伝えておくことが大事です。多くの場合、ゆっくりとこのような状態になりますが、一部の方は一気に亡くなるケースがあるので、やり残しを後悔しないように最後の介護・看護に臨まれるとよいでしょう。

この時期のPoint
心残りなくお別れができるように、親戚や親しい方に連絡する。
最後の日が突然やってくるかもしれないことを念頭に心の準備をする。

余命2日~お看取りまでの変化
(症状の変化が時間単位と
考えられる時期)

余命2日~お看取りまでの変化(症状の変化が時間単位と考えられる時期)

  • 1日中、反応が少なくなってくる
  • 脈拍の緊張が弱くなり、確認が難しくなってくる
  • 血圧が低下してくる
  • 手足が冷たくなってくる
  • 手足が青紫色に変化する(チアノーゼ)
  • 冷汗が出現する
  • 顔の相が変わる(顔色が変わる)
  • 顎を使って息をするようになる(下顎呼吸)
  • 呼吸時にごろごろと不快な音が出現する(死前喘鳴)
  • 身の置き所がないかのように、手足や顔などをバタバタさせるようになる

いよいよ最後を迎えるこの時期は、周囲に対して関心がなくなり、うとうとと寝ていることが多くなります。名前を呼ぶと目を開けるなどの反応がありますが、開眼しても、見えなくなります。音や声は、最期まで聞こえていますが、口が乾燥し、言葉が出にくく、応える力がなくなり、意識がないようにみえることが多くなります。音は最期まで聞こえるので可能な限り声をかけてあげるとよいでしょう。また血圧が下がるために、手足が冷たくなり、チアノーゼと言って、手足の色が紫色になり、斑点がみられることがあります。体が弱ると眠りが深くなり、唾液をうまく飲み込めなくなるために喉がゴロゴロと音を立てる(死前喘鳴)ことがありますが、自然の変化です。苦痛があれば吸引をしてあげるとよいでしょう。

お看取りの直前は、呼吸のリズムが不規則になり、息をすると同時に肩や顎が動くようになります(下顎呼吸)。次の呼吸が始まるまで1分以上かかることがあり、呼んでもさすっても反応がなく、ほとんど動かなくなります。やがて、徐々に呼吸が止まり、胸や顎の動きがなくなります。脈が触れなくなり、心臓が止まります。

自宅でのお看取りの場合は呼吸が停止する瞬間に医師が立ち会うということはほとんどありません。病院でのお看取りのイメージにあるように、モニターで波形を見ながら臨終を迎えるというわけでもありません。
呼吸が停止していると思ったら、慌てず、医師に連絡し、医師が到着するのを待つようにしてください。医師が死亡の確認をした時間が、お看取りの時間になります。

場合によっては、朝起きてみたら呼吸が止まっていた、ちょっと目を離したときに呼吸が止まっていた、というようなこともありますが、ご家族が呼吸停止の瞬間を見守ってあげられていなかったということが、何か大きな問題になるということではありませんし、自宅でお看取りする場合はむしろこのうようなケースの方が多いくらいですので、自責の念にとらわれすぎなくてもよいかと思います。

この時期のPoint
呼吸が止まっていると分かったら慌てずに医師を呼ぶ。
お看取りの際に救急車を呼んでしまった場合、検視で警察が介入せざるをえないこともあるので注意が必要です。