院長ブログDOCTOR BLOG
血液型検査について
2024年3月1日
血液内科専門医で副院長の瀧本です。
最近「血液型は調べられますか?」というご質問を受けることが多くなっています。
今回はこちらの院長ブログの場をお借りし、血液型検査の是非やその時期についてお話したいと思います。
■血液型とは
私たちの体を流れる血液は、血球(赤血球、白血球、血小板の細胞成分)と血漿(液体成分)から成り立っています。血液型は、赤血球の表面にある「抗原」というタンパクで決まります。一般的に知られている血液型はABO血液型といわれ、赤血球側(おもて検査)と血漿側(うら検査)の両方を検査し、その結果を照合して決定します。
赤血球側(おもて検査)では、赤血球膜上のA抗原、B抗原の有無を検査します。たとえばA抗原だけ検出されるとA型と判定されます。一方、血漿側(うら検査)では「抗体」というタンパクを調べます。抗A抗体、抗B抗体の有無を検査し、たとえばA型の人は抗B抗体のみが検出されます。このようにABO血液型は、赤血球側(おもて検査)と血漿側(うら検査)の両方を行い判定されます。
■赤ちゃんの血液型検査について
1990年代頃までは、分娩費用の一環として新生児の血液型検査を行っている医療機関もありましたが、現在では診療上の必要性がなければ新生児期の血液型検査は行われません。新生児では、十分な抗体が作られていないことに加え、かつ胎児中に母親から移行した抗体が反応することもあり、通常血漿側(うら検査)をせず赤血球側(おもて検査)だけを行います。また新生児では、赤血球膜上のA抗原やB抗原の現われ方が弱いため血液型検査の精度には限界があります。
「生まれた時におしえてもらった血液型が大人になって変わる」といわれるのは、新生児の時の検査結果が、正確に判定できないことがあるためで、血液型が本当に変わってしまうわけではありません。
■では、血液型検査の望ましい時期はいつですか?
生後6ヶ月ごろに抗体が産生され始め、1歳ごろにはきちんと抗体が産生されるといわれています。3歳ごろになると赤血球膜上のA抗原、B抗原の現われ方は大人と同じくらいになります。従って、正確な血液型の判定を求めるならば、4歳以上での検査が望ましいと思われます。ただ、血液型検査は注射器で採血をすることになるため、小学生以下の子どもにとって医療的に不要な検査を、痛い思いをさせてまでする必要はないと考えます。
そのため当院では、18歳未満の未成年の方が血液型検査を希望される時、目安として中学生以上、かつ親御さんと共にご本人も希望なさる方の検査をお勧めしております。
「親として子どもの血液型を把握していないのは不安」と感じられる場合もあるかもしれませんが、お子さんに輸血が必要となる場合には、輸血を行う医療機関で前述のような血液型検査が速やかに行われます。よって事前に血液型を知っておく必要はありませんのでご安心ください。
■検査費用
血液型検査に健康保険は適用されませんので、費用は自費になります。
【当院再診の方】3,300円【当院初診の方】5,500円