院長ブログDOCTOR BLOG
新型コロナワクチンは今年も必要?|高齢者に接種をお勧めする理由
2026年10月14日

「新型コロナワクチンは、今年も接種した方がよいのでしょうか?」
最近、診察室でこのような質問を受けることがあります。
新型コロナウイルス感染症が5類感染症となってから3年以上が経過し、以前ほど新型コロナを意識する機会は減りました。また、「これまで何度もワクチンを接種したので、もう必要ないのでは?」と考えている方もいらっしゃると思います。
結論から申し上げると、私は、特に高齢者の方には今年も新型コロナワクチンの接種をお勧めしています。
その理由について、最近の研究結果も交えながらお話ししたいと思います。
この記事の内容
新型コロナワクチンを過去に何度も接種していても、免疫は徐々に低下します
新型コロナワクチンによって得られた感染や発症を防ぐ効果は、時間の経過とともに低下することが知られています。
また、新型コロナウイルスは現在も変異を繰り返しており、過去の接種によって得られた免疫だけでは、現在流行しているウイルスに十分対応できない可能性があります。
もちろん、過去の接種による免疫がすべてなくなるわけではありません。重症化を防ぐ免疫は比較的長く維持されると考えられています。
それでも、「以前に何度も接種したから、もう大丈夫」とは言い切れません。
新型コロナは、今でも高齢者にとって危険な感染症です
新型コロナウイルス感染症は、以前と比べて軽症で済む方が増えています。しかし、高齢者では今でも肺炎や呼吸不全などによって入院が必要になることがあり、重症化や死亡には引き続き注意が必要です。
実際に、国内外の研究でも、新型コロナによる重症化や死亡のリスクは高齢者で高いことが報告されています。
新型コロナは、現在でもインフルエンザと同様に、高齢者にとって注意が必要な感染症です。
「最近の新型コロナは軽いから大丈夫」と考えるのではなく、特に高齢者の方には、引き続き注意していただきたいと思います。
最近の研究でも、ワクチンの重症化予防効果が確認されています
では、現在の新型コロナワクチンには、どの程度の効果があるのでしょうか。
2026年に医学誌『JAMA Network Open』に掲載された米国の研究では、2025~2026年シーズンのワクチンについて、65歳以上の方で約50%の入院予防効果が報告されています。
国内の研究でも、高齢者における入院予防効果が確認されています。
もちろん、ワクチンを接種すれば必ず重症化を防げるわけではなく、その効果も時間の経過とともに徐々に低下します。
それでも、過去に何度もワクチンを接種した方にとっても、そのシーズンに対応したワクチンの追加接種による重症化予防効果が期待できます。
新型コロナワクチン接種の大きな目的は、感染を完全に防ぐことではなく、入院や死亡などの重症化を防ぐことにあります。
新型コロナに感染した場合は、早期の治療が重要です
ワクチンによる予防とともに、もう一つ大切なのが、感染した場合の早期治療です。
現在、新型コロナウイルス感染症には、パキロビッドやラゲブリオなどの抗ウイルス薬があります。
重症化リスクの高い患者さんでは、発症早期に適切な抗ウイルス薬を使用することで、入院や死亡のリスクを減らす効果が期待できます。
特に高齢者では、診断時に症状が軽くても、その後に状態が悪化することがあります。
そのため、重症化してから治療を考えるのではなく、症状が軽いうちから抗ウイルス薬の使用を検討することが重要です。
ただし、抗ウイルス薬はすべての方に必要というわけではありません。年齢や基礎疾患、腎機能、併用薬などを確認したうえで判断します。
また、抗ウイルス薬には高額なものもあり、健康保険が適用されても患者さんの自己負担は決して少なくありません。
それでも、重症化リスクの高い方では、費用だけを理由に有効な治療の機会を逃してほしくないと思っています。
特に高齢者の方には、症状が軽くても早めに医療機関へ相談していただきたいと思います。
高齢者では、入院によるADLの低下も心配です
高齢者の新型コロナで心配なのは、肺炎や呼吸不全などの重症化だけではありません。
感染によって入院すると、安静にしている時間が増え、食事量や筋力の低下などによって、全身の機能が落ちてしまうことがあります。
それまで自分で歩けていた方が歩行に介助を必要とするようになったり、身の回りのことが一人では難しくなったりする場合もあります。
このようなADL(日常生活動作)の低下は、感染症が改善したからといって、すぐに元に戻るとは限りません。
回復までに長い時間を要することもあり、場合によっては入院前と同じ生活に戻ることが難しくなることもあります。
高齢者の新型コロナでは、命を守ることはもちろん、それまでの日常生活を守ることも非常に重要です。
そのためにも、ワクチンによって重症化を予防すること、そして感染した場合には、できるだけ早く外来で適切な治療を開始し、入院が必要になるような状態を防ぐことが大切だと考えています。
もちろん、入院が必要な状態であれば、適切な入院治療を受けることが重要です。
接種をお勧めするうえで、心苦しいのは費用の問題です
医学的には接種をお勧めしたい一方で、気になるのが接種費用です。
2026年度の川崎市の定期接種では、川崎市に住民登録がある次の方が対象となります。
- 65歳以上の方
- 60~64歳で、心臓・腎臓・呼吸器の機能、またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に一定の障害がある方(障害1級程度)
接種期間は2026年10月1日から2027年2月28日までで、自己負担額は7,000円(税込)です。
上記の対象に当てはまらない方も、任意接種として当院で接種できます。費用は16,500円(税込)となります。
なお、生活保護世帯や市県民税非課税世帯など、一定の条件を満たす方は自己負担が免除される制度があります。
詳しくは川崎市公式ホームページ「新型コロナワクチン定期予防接種」をご確認ください。
インフルエンザワクチンと比べても高額であり、特に年金で生活されている高齢者の方にとって、7,000円という金額は決して小さな負担ではありません。
診察室で接種をお勧めする立場として、患者さんにこれだけの費用をご負担いただくことには、正直なところ心苦しさがあります。
できれば、もう少し少ない自己負担で接種できる制度になってほしいと思っています。
それでも、私は接種をお勧めします
新型コロナワクチンの接種後には、腕の痛みや発熱、だるさなどがみられることがあります。
過去の接種で体調の変化があった方や、副反応が気になる方は、接種前にご相談ください。
年齢や持病、これまでの接種時の様子などを踏まえて、接種について一緒に考えていきます。
特に65歳以上の方や、重症化リスクの高い基礎疾患をお持ちの方には、接種するメリットが大きいと考えています。
ワクチンも抗ウイルス薬も、患者さんにとって費用の負担が大きいことは十分承知しています。
それでも、感染によって入院が必要になったり、それまでの生活が大きく変わってしまったりすることを、できる限り防いでいただきたいと思っています。
新型コロナから命を守るだけでなく、これまでどおりの生活を守るためにも、ワクチン接種と感染後の早期治療を大切にしていただきたいと思います。
以前に何度もワクチンを接種した方も、今年の接種について改めてご検討いただければと思います。
参考文献・資料
- Wiegand RE, et al. Interim Estimated Effectiveness of 2025-2026 COVID-19 Vaccines in Adults Using a Test-Negative Design. JAMA Network Open. 2026;9(6).
- 厚生労働省「新型コロナワクチンの有効性・安全性について」
- 川崎市「令和8年度 新型コロナワクチン定期予防接種」