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重症スギ花粉症に対する抗IgE抗体治療 ―ゾレア®(オマリズマブ)という新しい治療選択肢-

2026年3月14日

重症スギ花粉症に対する抗IgE抗体治療

―ゾレア®(オマリズマブ)という新しい治療選択肢-

 

春が近づくと、スギ花粉症に悩まされる患者さんの受診が増えてきます。くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状はよく知られていますが、症状が強い場合には日中の眠気や集中力の低下を招き、日常生活にも少なからず影響を及ぼすことがあります。

通常、花粉症の治療は抗ヒスタミン薬などの内服薬や点鼻薬を中心に行います。しかし、これらの治療を行っても十分に症状が改善しない重症・最重症のスギ花粉症の患者さんも少なくありません。

 

こうした重症スギ花粉症に対しては、抗IgE抗体製剤オマリズマブ(ゾレア®)による治療が保険適用となっており、治療の選択肢の一つとなっています。従来の治療で十分な効果が得られなかった患者さんに対して、症状の改善が期待される治療です。

今回は、この治療の概要についてご紹介します。

 

花粉症の症状はどのように起こるのか

 

花粉症は、体内で産生されるIgE抗体という免疫物質がスギ花粉に反応することで生じるアレルギー疾患です。スギ花粉に対して体がアレルギー体質(感作)を獲得すると、IgE抗体が肥満細胞などの免疫細胞の表面に結合します。そこに再びスギ花粉が侵入すると、IgE抗体を介して免疫細胞が刺激され、ヒスタミンなどの炎症物質が放出されます。

 

その結果

・くしゃみ

・鼻水

・鼻づまり

といった症状が引き起こされます。

 

ゾレア®は、このIgE抗体に結合してその働きを抑える抗体医薬です。アレルギー反応の上流に作用することで、花粉症症状の軽減が期待されます。

 

治療の対象となる方

 

下記の項目を満たしていることが条件になります。

  • 12歳以上
  • 体重が20~150㎏
  • スギ花粉抗原に対する血清特異的IgE抗体がクラス3以上
  • 血清中総IgE濃度が30〜1,500IU/mL
  • 例年、季節性アレルギー性鼻炎の症状が重症・最重症の状態である

 

<重症以上の季節性アレルギー性鼻炎の状態とは>

くしゃみ、鼻汁、鼻づまりの症状が全てあり、いずれか一つ以上に該当する

 

くしゃみの回数:1日あたり11回以上

鼻水(鼻かみ)の回数:1日あたり11回以上

鼻づまりの状態:鼻づまりがひどく、かなりの時間が口呼吸

 

 

投与方法と治療期間

 

治療は皮下注射で行います。

 

投与は通常4週間ごと(条件によっては2週間ごと)に行い、主に2月から5月のスギ花粉飛散期に実施します。投与量は患者さんの、体重・総IgE値によって決定されます。

投与数日後~2週間後に効果が出始め、効果の持続期間は約1ヶ月と言われています。

 

 

治療費について

 

平均的な自己負担額

費用は投与量によって異なりますが、1回の投与量150mgの方で6,397円、300mgの方で12,794円となります。(3割負担の場合)。このほか、診察料、血液検査費用、併用する抗ヒスタミン薬の処方費用などが必要となります。

※2026年時点のものなので、多少薬価が変動することがあります。

 

医療費の自己負担が高額となる場合には、「高額療養費制度(限度額適用認定証)」の利用を検討されるとよいでしょう。

 

 

期待される効果

 

この治療は、次のような患者さんにとって有用となる可能性があります。

 

・毎年花粉症の症状が非常に強い

・内服薬や点鼻薬では十分な効果が得られない

・薬の眠気などの副作用で治療の強化が難しい

・受験など重要な時期に症状をできるだけ抑えたい

・また、2〜4週間に1回の注射で治療が行える点も特徴です。

 

 

安全性について

 

注射部位の腫れや痛み、めまい、疲労感などの副作用が報告されています。

比較的安全性の高い薬剤ではありますが、まれにアナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)が生じる可能性があります。気管支喘息患者を対象とした海外臨床試験において、発現頻度は成人で0.1%、小児で0.2%と報告されています(ノバルティス社ホームページより)。そのため、初回投与後は一定期間待機していただき経過観察を行います。

 

 

治療開始までの流れ

 

  • 初回

花粉症の症状やこれまでの治療状況を確認します。その上で、まずは抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド薬などの標準的な治療を行い、症状の改善状況を評価します。

 

  • 再診

症状の改善が不十分な場合、治療適応を判断するための問診と血液検査を行います。

 

  • 結果説明(お電話でお伝えします)

検査結果をもとに、適応の有無や投与量、費用などをご説明します。

 

  •  投与開始

予約日に来院していただき、皮下注射による治療を開始します。

 

 

最後に

 

花粉症は多くの方が経験する疾患ですが、症状が強い場合には日常生活にも少なからず影響を及ぼします。現在では、従来の内服薬や点鼻薬に加え、症状の程度に応じた新しい治療法も選択できるようになりました。今回ご紹介した抗IgE抗体治療は、従来の治療で十分な効果が得られなかった重症スギ花粉症の患者さんに対する治療の選択肢の一つです。

 

花粉症の症状でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

 

ゾレア®に関する詳細は、下記リンクよりご確認下さい。

🔗ノバルティス社HPより 季節性アレルギー性鼻炎 (花粉症)でお悩みの 患者さまとご家族の方へ